第35回新象展に出品されたものだが、100号の正方形の画面に描かれているのは、一体何か。
樹木の年輪のような模様を持つ、人間を連想させる奇妙なフォルムと、人間の残映を感じさせる赤いマスクが数多く打ち捨てられた砂漠の貝塚。そして、その間を縫うようにして伸びる不思議な植物…。
赤い砂漠の中にうずくまって、何かを祈るかのようなポーズを採る“人物の群れ”。これは、高知県立郷土文化会館賞展フィナーレ展で大賞を受賞した「砂漠での『スゴロク』」や「花札の予言」の中にも登場するキャラクターであり、不気味な緊張感があると同時に、骨太の存在感が与えられている。
その周囲から発芽したさまざまの葉。これは宇宙の果てまで伸びているのだろうか、葉の表には星が無数にちりばめられている。
しかも、その星は米国国旗の星条旗を連想させる様式化された星のようでもあり…〈自由〉と〈平等〉の輝きと希望に満ちた、“幻のアメリカ”をも暗示するのかもしれない。
赤と青この対極にある色を有効に使い、色彩と形象が響き合う幻想的世界を表出しており、この作家の豊かなイマジネーションの動きを感じさせる作品でもある。
作品解説・小松康夫(高知新聞編集委員1995年当時)
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